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2006/11/26
設計者とクライアントの関係・・・公共施設編
これまでに、計4回「設計者とクライアントの関係」というテーマで連載をしてきました。
今回は、連載の最終回として公共施設編を書きます。
公共施設のクライアントは、都道府県、市などの地方公共団体になります。
わたし自身は、地方公共団体のお仕事(俗に「役所物件」と言ったりします)は
担当したことはありません。
なので、手伝った経験や聞いた話しなどを主体に書きます。
まず、役所物件の仕事は、入札に参加することから始まることが大半です。
入札にも参加資格があったりして、名目上は実績重視と聞きますが、
実態はドロドロした内部取引もあると思われます。。
役所を糾弾してもしょうがないので、このへんで(笑)。
入札に参加して、値入をして、実績等を査定されて仕事を落札します。
さて、
ここからは、民間がクライアントの場合と比べてとても時間がかかるのが通例です。
設計者は、役所の担当者と打ち合わせをして仕事の進め方を決めますが、
役所は重層構造なので、
担当者
↓
上司
↓
上司の上司
↓
上司の上司の上司(このくらいまではたいていあるでしょう)
↓
xx長
↓
市長、知事など
↓
官庁、省庁
↓
大臣
このような過程で、数ヶ月くらいかかって予算に関する判子をもらう・・
なんてことはざらでしょう。
こんな仕事の流れがたくさんあるので、中々先に進まないのです。
役所物件を受注した設計事務所は、いつ動くか分からない仕事に対して
人員をある程度確保しておかないといけないことになります。
そういう意味で、余裕のない設計事務所が受注すると危険です。
役所物件は、民間での常識が通用しない進み方をすることも多々あります。
設計が終わって、確認申請が受理されて、いよいよ着工!・・・
で現場事務所を作ったら、仕事が中断。。。
理由は、予算がおりなくなった。。
なんてことも、結構多いようです。
街中で仮設事務所がいつまでも放置されていたら、その可能性が高いです。
理由なんて、考えてもしょうがないので(苦笑)、あきらめるしかない世界です。
民間だったら損害賠償問題ですけどね。。
このような問題がなく、仕事が進む場合は設計料が叩かれるようなこともないので、
比較的良いお仕事の部類になると思います。
ただし、役所がクライアントなので、
工事途中の検査がやたら多かったり、
融通が利かなくて、やり直しが多く発生したり、
なかなか疲れる部分も多いと思います。
以前、ブログでも取り上げましたが、
建築基準法は、建築業界の実態から乖離している部分が多くあります。
民間の仕事であれば、基準法の効率の悪い部分を考慮しない金額で
工事は行われています。
実際問題として、
建築基準法を守ることでクオリティが落ちる部分というのも実際はあります。
このあたりは、実務者の意見を取り入れた改正等が行われる必要があるでしょう。
ですが、
役所は、そういう訳にはいきません。
法の番人なので、効率が良かろうが、悪かろうが、法律通りに指示をするのです
(稀に、設計経験者の方で融通の利く方もいますが)。
民間は、それも含めて覚悟の上で仕事を受注していると思います。
しかし、
仕事の種類によっては、その効率の悪さが命取りになることもあります。
新潟の朱鷺メッセで歩道橋が落橋した事故は、その良い例だと思います。
詳細は、まだ裁判中だと思いますので、控えますが、
難易度の高い構造物を建設するのに、適切でない受注体系や工程が
多々ありました。
地元の設計事務所や建設会社を使うために、実際に設計した事務所に
監理をさせなかったり、難易度の高い構造物の建設経験の浅い地元ゼネコンを
使ったり、発注者側の都合による問題がいろいろありました。
お役所というのは、意思決定について担当者が分散していてある意味責任転嫁
しやすい構造になってます。
起きた問題を、ある特定の担当者一人を責めても無駄になるようにできています。
(ある意味、読みにくい法文も責任逃れに近いものです・・)
この点は、民間では理解できない部分ながら、
受注する設計者としては、議事録を詳細に取ったり、決定事項に関する責任者の
書面をその都度要求するなど、十分に注意したい部分だと思います。
とはいえ、クライアントなので、失礼のない範囲で・・となるのが、難しいところですが。。
個人的に、
役所がクライアントとなる仕事は、
年度末の予算調整がみえみえだったりすると、エンドユーザーの顔が見えないので、
ちょっと、やる気が出ないと思います。。
売上は大事ですけど、設計者としてのプライドは捨てたくないです。
役所の仕事は、全体的にドライなイメージが強いので、
もっと血の通った仕事の目的を持って、進めてもらいたいと思います。
以上です。
「設計者とクライアントの関係」の連載はこれで終了です。
この連載を通じて伝えたかったのは、
仕事の力関係上、
一番上流にいるクライアントの姿勢で仕事の質の大部分が決まる!!
とういことです。
「建築は素人だから、起きた問題は設計者やゼネコンの責任・・・」
というのは、間違っています。
クライアントが出した要望を、設計者やゼネコンが「NO」と言える仕事上の関係性が
できているかどうか?はとても大事なことです。
「NO」ばかり言うのは良くありませんが、「YES」ばかりの設計者やゼネコンだとしたら、
逆に疑うくらいで丁度良いと思います。
設計者もゼネコンも、クライアントに良く思われるために少々無理をしてでも頑張ってしまう
傾向があるのです。
その無理の積み重ねが、「耐震偽装」を産み出した根底にあるのは間違いありません。
クライアント側にも、建築に興味を持ってよく勉強してもらう必要があると思います。
様々な要望の片隅にでもよいので、「構造安全性」をちゃんと意識してくださいね(笑)。

